言語の習得は「読み書き」からが正解?

「読み書き」という言葉がありますが、語学習得に順番などはあるのでしょうか。

実は「読み・書く・聞く・話す」にも学ぶ順番があります。



▼子どもの言語習得

子どもはどうやって言語を習得するかを考えるとわかりやすいです。

母国語でも第二言語でも、実は言語を学ぶプロセスは同じです。

赤ちゃんで考えてみましょう。話せないので、まず「聞く」です。赤ちゃんは胎児の時から、親や周りの人からたくさん話しかけられ続け、「話す」ようになるまで、本当に多くの時間を「聞く」ことに費やします。

そして、次が「話す」です。幼稚園児は聞いたり話したりはできるけれど、読み書きはその後です。また外国人の日本語学習でもよくありますが、話すことはできても、「読み・書き」があまりできなかったりします。

そしてその次が「読む」です。当然ながら、読めないものを書くことはできません。



▼「聞く」→「話す」→「読む」→「書く」の順番

こう考えると習得プロセスは非常にわかりやすいです。

しかしなぜか「語学」とか「英語」とか学問習得の文脈になると、このプロセスを見落としがちです。



▼「聞く」「話す」は学校教育システムでは限界がある

例えば中学校での従来の学習では、いきなり文法で「読み」から入りますし、日本の英語教育では「読み」「書き」から入って、そればかり勉強します。その結果が、「文法は比較的できるのに、何を言っているのかわからないし、話せない」という現象です。

なぜ「聞く」「話す」に時間が割けないかというと、学校教育制度の限界も見え隠れします。集団授業で40名1クラスを1人の先生が担当して、「話す」時間をしっかりとることは誰がやっても難しいです。また先生が話すことが得意でないケースもあるでしょう。(先生がうまく英語を話せなければ、生徒が聞く時間は確保しにくい。)



▼「ただ聞くだけ」も違う

では第二言語習得にあたり、とにかくたくさん「聞くだけ」でいいかというと、それも極端な議論です。厳密には「ただ聞く」の時間量と年齢(子どもか大人か)によって、正解にも不正解にもなります。

海外生活やインターナショナルスクール通学など、生活の大部分でその言語を聞く環境にあれば、母国語同様の言語習得は可能でしょう。

日本の英語教育業界は、文法ばかりの「読み」「書き」受験英語と、会話に特化し過ぎて外国人がひたすら話すだけの英会話スクールに断絶しています。



▼年齢や語学レベルによって、学び方の正解は異なる

大切なことは、この言語の学習プロセスを認識して、バランスよく学んでいくことです。例えば初学者であれば、「聞く」「話す」などの割合が多くなります。また小学1年生と大人では、当然学び方が違います。

成熟度と語学レベルによって、4技能の適切なバランスは違うので、誰にでもあてはまる1つの正解はありません。基本を知った上で1人1人の状況に応じた学習が必要です。