ネイティブ・スピーカー神話

「英語は、ネイティブ・スピーカーに習うのが一番!」

よく聞く宣伝文句ですが、今回はこの「ネイティブ・スピーカー神話」について、考えてみます。


子どもは言語の天才

発音と聞き取りに関して、大人は30年間外国に住んでもネイティブ・スピーカーにはなりません。一方、子どもは数年間住んだだけで、ネイティブ・スピーカーになったりします。

同じことを学習したら、大人の方が圧倒的に学習能力は高いはずなのに、この領域では大人は小学生に勝てないのです。

これは「言語臨界期」と呼ばれます。「言語臨界期」仮説とは「外国語学習には、臨界期、すなわち、その時期を過ぎると学習が不可能になる期間がある」(引用:「外国語学習の科学」白井恭弘著)という話です。

学習が不可能になると言うと大げさですが、要はネイティブ・スピーカーになるには年齢的限界があるということです。

他の言い方をすると、音を聞きわかる力と発声する力は、大人より子どもの方が圧倒的に優れているということです。


▼ネイティブ・スピーカーから英語を学ぶ価値

そう考えるとネイティブ・スピーカーから英語を学んだ方が価値が出やすいのは、正しい音の聞き取りや発声が学びやすい子ども、という結論になります。

では言語臨界期を超えた、子どもや大人はどうでしょうか。もちろんネイティブ・スピーカーの先生でもいいですが、必ずしもその必然性は高くないです。

客観的事実として言語臨界期を超えたら、ネイティブ・スピーカーにはなりません。この年齢での英語習得の目的は、ネイティブスピーカーのような英語を身につけることより、「しっかり理解できて通じる英語」を学ぶことです。その学びを提供できる人がネイティブ・スピーカーでなければ、ネイティブ・スピーカーにこだわる理由はありません。


▼目的に応じた先生と学習

例えば大学受験は、結果勝負の世界です。その受験英語業界でトップの予備校講師に、ネイティブ・スピーカーはどの位いるのでしょうか。そこに日本語が達者でないネイティブ・スピーカーの先生がくいこめているでしょうか。(大学受験の内容が正しいかという議論は横におきます。)

言語臨界期を超えた人の学習では、ネイティブ・スピーカーかどうかよりも、目的に合わせた結果が出せる先生かどうか、その先生と一緒に学ぶことで学習のモチベーションが高まるか、という視点がより重要になるのです。