昔カリブ海にあるドミニカ共和国に行った時、現地の日系人と知り合う機会がありました。
▼日本語を話さない日系2世
私が親しくなった日系人は、父母が日本から移住したいわゆる日系2世でした。そこで驚いたことは3世ではなく2世にも関わらず、彼が日本語を全く話せず、理解もできなかったことです。
彼の家に行ってお母さんにも会ったのですが、当然ながらお母さんは母国語として日本語を流暢に話しました。家庭での両親同士の会話も常に日本語とのことです。
そんな家庭環境で育った彼が、全く日本語ができないというのは衝撃的でした。そんなことがあるかと、試しに日本語で話しかけてみましたが、彼は本当に理解できませんでした。(両親は日本語では通じないので、彼にはスペイン語で話していました。)
▼帰国子女と日系人
両親が日本育ちで家庭言語が日本語で本人は海外育ち、という意味ではこの日系人も、長い期間海外で育った帰国子女も環境は同じです。
ただうまい下手はあれど、さすがに日本語が理解できない帰国子女に会ったことはありません。
こうした違いはどこから生まれているのでしょうか。
考えうる原因は主に2点です。
・自分のアイデンティティ
・親の日本語教育に関する関わり
「自分のアイデンティティ」とは、これは自分がどこの国の人間と考えるかです。海外に住んでいても、自分が日本人であり、最終的に日本人として生きると本人が思っていれば、日本語を勉強しようという気持ちが多少なりともあるでしょう。
一方自分がドミニカ人で、日本という島国が遠い存在で、日本語を使うことに意味が感じられなければ、日本語を勉強することもないでしょう。
日本人帰国子女が海外で頑張って日本人学校に通ったり、日本語を勉強することは、日本人だから日本語を、という前提があるのです。
▼学習環境と学ぶ理由の重要性
この話は多くの方にとって、「うちの子どもは海外に住んでいないし、関係ない話」に聞こえるかもしれません。
しかしこの話から学べる点は、日本人で日本で育つからこそ、余計に外国語を学ぶことが難しいということです。親がネイティブスピーカーでその言語を話している環境で育ったとしても、意識と環境によって、その言語を話すことはおろか、聞いても理解できないということがあるのです。
逆説的には、それほど語学学習は難しいとも言えますし、良い学習環境が大切ですし、子ども達が外国語を学ぶ理由を感じられることも重要なのです。
海外在住の日本人の親が必死に子どもに日本語を勉強させる以上に、日本にいる日本人が英語を勉強することには、親や周りの人の熱心な協力が必要なのです。